Home研究活動の紹介経歴・所属研究業績研究資金獲得状況


現在の研究

フォトグラメトリによる浅海底の景観生態学
景観生態学(地生態学)とは、環境の空間的な配置やスケールに着目して生態学的現象を解析する分野です。例えばどのような環境条件にどのような植物種が分布しているかを調べる植生学は、景観生態学の最も基本的な分野の一つです。環境を空間的に把握しようと思ったら、地図の存在が前提となります。例えばある範囲にある種の群落がどれくらいの面積で存在しているか、といったような地上では簡単に調べられることすら、十分に地図が存在しない海底ではまだ難しい現状があります。

私は、海底地形の探査技術を用いて海底の地図を作ることで、浅海底における景観生態学的研究の開拓に取り組んでいます。主に使用しているのは写真測量(フォトグラメトリ)という写真から3次元形状を復元する手法です。ダイビングをして海底景観を連続的に撮影し、3次元モデルを構築します。透明度や水深、地形の複雑さなどの条件にもよりますが、1本のダイブで1000平方メートルぐらいの範囲の数cm解像度の3次元モデルを得ることができます。海底の地図を用意することで、どのような地形、底質にどのような生物が生息しているか、そのような環境がどれくらい存在するかを記録することが可能になります。

これらの研究を通して、水産業や生態系保全にとって重要な海底立地を抽出するための手法の確立を目標の一つとしており、持続的な海底の空間利用計画の立案や海底生態系の管理技術の向上につながる成果を得られることが期待されます。

研究フィールド

1. 岩手県大槌湾
修士課程・博士課程の大学院生時代は、岩手県大槌町にある東京大学大気海洋研究所の国際沿岸海洋研究センター(現、大槌沿岸センター)で研究をしていました(2018年4月~2022年3月)。センターの目の前にある大槌湾をメインフィールドとして毎月潜水調査をしていました。冬は親潮が入ると3度まで冷え込む本州で最も寒い海の一つだったので、ドライスーツが必須の環境でした。大槌湾では、水中写真測量を用いて岩礁上の付着生物の分布パターンに関する研究を行いました。

岩手県大槌湾の岩礁域(2021年1月)

岩礁域にみられる付着生物群集

付着生物の分布パターン調査に使用する岩礁の3次元モデル

2. 福岡県糸島市姫島
2022年4月からは、学振PDとして九州大学菅研究室で研究をしています。大学からごく近くの海域を調査地とすることで、高頻度に調査を行うことができています。藻場分布の可視化に取り組んでいます。海藻群落が消失する磯焼けは、福岡の海でも顕在化し始めていますが、福岡県北部の海では磯焼け域と比較的豊かな藻場が近接して存在しています。この立地の違いや、その原因を調べています。

様々な海藻類が繁茂する海藻群落(2023年2月)

磯焼けした岩礁(2023年2月)

地域ファウナの調査活動

山や海、湿地などに出かけて野生生物の採集や写真撮影をしています。観察会の講師や絶滅危惧種の調査も行います。絶滅危惧種や珍しい生物の新しい生息地を見つけた場合には、短報として報告したり、標本をとって博物館に寄贈することもあります。調査中に採集された生物たちについても、写真や標本を残すようにしています。

岩手県在住時に撮影したギンカクラゲの写真。大気海洋研究所の2022年便覧のセンターに採用していただきました。

チャオビトビモンエダシャク。岩手県より半世紀ぶりの記録を地元の昆虫会誌に報告した。

岩手県より北限記録を報告中のクモ類、ツシマトリノフンダマシ

Home